小さな恋の物語。好きは魔法の言葉。

はじめに

はい!というわけで、今日は動画の感想ではありません!GWなので、なんとなく思いつきでたまには雑記も更新するか!ってなもんで、急遽謎のロングポエムをインターネットの海の中に投げ散らかしたいと思います。

特に何も言う事はありません。ではぜひ!読んでみてください。一応、フィクションですとだけ言っておきます。

それではどうぞ!

僕の話を聞いてほしい

それは今より少し昔の話。

当時僕はあまり人生が上手くいっていなくて、ヒマさえあればインターネットでとあるチャットルームに入り浸っていた。

今ほどインターネット環境が発達していたわけでもなかったその頃は、チャットルームに来るような人も限られていて、いつもの時間にいけばいつも同じ人達がいて僕はその人達と仲良くなった。

何人かいつものメンバーがいたんだけど、その中でも特に『かずき』という子と僕は仲良くなった。

最初はチャットで会話していたんだけど、当時流行っていたMSNメッセンジャー、今でいうところのPC版でのLINEのような物を使って、段々個人的なやり取りもするようになってきた。

毎日特に何という事もないけどくだらない会話を何時間も続けるうちにかずきとはどんどん仲良くなっていった。

かずきはどうも朝が弱いらしく、電話で起こしてくれと言われるようになり、お互いに電話番号を交換する事になり、比較的朝起きられる僕が朝かずきにモーニングコールする事も何度かあった。

くだらないが価値のある日々。どちらかと言えば曇りがちだった僕の人生にとって、顔も見た事ない会った事もないかずきとのやりとりは、人生を少し明るくする時間だった。

そんな日々が続いていたとある日。

僕は突然かずきに「大切な話がある」と切り出された。

僕の方が少し年上だった事もあり、色々な悩み相談なんかもされたりする事もあったから、何か重大な悩みでも出来たのかな?と思って少し心配もしながらその話を聞いてみると、それは驚きの内容だった。

「実は、私女なんです」

それまで何度も電話で会話していた。何度も声を聞いた。確かに、ちょっと高い声かなと思っていたけど、一人称は『俺』だったし、そういう事もあるのかなと気にした事はなかった。

なによりそんな声の事を聞くのは失礼だと思っていたし。

それがまさか、かずきが女だったなんて。

そして、さらに衝撃の話は続いた。

「実は、ずっと前から好きでした」

と。

これはなかなかに衝撃的だった。それまでずっと、男だと思って会話していた年下の子がまさか女性でしかも僕の事を好きだなんて。

しかしこれは困った事になった。僕はかずきと会った事もなければ顔を見た事もない。しいて言えば偽りの男性としての『かずき』を知っているだけで、女性としての彼女の本当など何も知らない。

そんな相手に電話で告白されても、僕もなんと答えていいのかわからない。

普通なら……。普通ってなんだろう。なんとなく笑ってごまかして流すのかな。とにかくそんな経験は初めてだったので、よくわからなかった。

僕の人生は、どちらかと言えば曇っていた。上手くいっていなかった。何も無い、その衝動をただ毎日チャットにぶつける日々だった。

その当時の僕は、そんな人生を変えるような何かキッカケが欲しかったんだと思う。

「……わかった。じゃあとりあえず会ってみようか?お互い何も知らないし。」

そうして僕達は会う事になった。ただこれには、1つだけ大きな問題があった。

僕の家は大阪で、彼女の家は千葉だったんだ。

僕の方が年上で男だったという事もあり、僕が彼女の住む千葉に行く事になった。彼女もまさか本当に僕がそんな事を言い出すとは思っていなかったみたいで驚いてはいたけど、最終的には結構前向きに計画は進んでいった。

生まれて初めて自分で新幹線の自由席のキップを買い、僕は大阪から東京、そこから千葉を目指した。

何もわからない。人生で初めての東京駅に興奮もした。

テレビでしか見た事のなかった光景がそこにはあり、なにより僕はほとんどちゃんとした目標も無く、ただネットで知り合った女の子と会うためだけにわざわざここまで来たんだという馬鹿馬鹿しさが、逆に僕を興奮させた。

すでに事前に写真でお互いの容姿も交換しており、特に問題も無く合流を終えた。

しかし、ここから何のプランも無かった。

会う。ただそれだけが目的で、そこから先は出たとこ勝負。本当は僕がリードしてあげたかったけど、そもそも土地勘がまったくない。何も知らないわからないのだ。

初対面の女の子と特に何の目的も無く土地勘も無い場所で2人デートとか、もの凄くアウェー感があるけど、不思議と上手くいった。

まず最初に行ったのは、なんとなく駅名を眺めていて目についた『千葉動物公園』だった。

レッサーパンダの風太君で有名だったその動物園に行ってみたくて、なによりとにかく間を持たせたくて、僕達2人は動物園に向かった。

2人会うのは初めてだし、なにより最初は男友達としてやってきたのに、初対面はカップルもどきとしてデートみたいな事をしているんだから、なかなかぎこちなかった。

彼女はメガネをかけた男性が好きだと言っていたので、僕はわざわざ安い伊達メガネを買ってそれをかけて彼女に会うと、彼女はそれが嬉しかったのか顔を真っ赤にしてうつむいて笑った。

(可愛いな)

それが素直な僕の感想だった。

しばらく動物園を見て回り、じゃあ次どこに行こうか?という話になった。

僕は東京に行った事が無かったので、せっかくなので東京に行きたい!と言って、2人東京に向かう事になった。

東京に行けば何かあるだろう。目につく場所にとりあえず行けばなんとかなるだろう。そんな安易な考えだった。

東京についた僕は、なんとなく駅名を見て『永田町に国会議事堂を見に行きたい!』とかいう提案をしたような気がする。

今思うと、なんで女の子とのデートに国会議事堂見に行くんだよと思わないでもないけど、見たかったもんはしょうがない。

で、実際に見た感想はもう覚えていない。なんの印象にも残っていないところを思うと、たぶん面白くなかったんだと思う。

それからさらに、たしか大江戸線に乗って両国に行ったと思う。国技館を見たかったからだ。

でも、それもほとんど覚えていない。たぶん面白くなかったんだろう。

そして、町を歩いていて僕達は『水上バス』を発見した。水上バス。男女2人のデートコースとしてはなかなかいいんじゃないだろうか。

それがどこに行くのかを見てみると、なんとお台場があった。

お台場。当然行った事は無いが最高のデートスポットではなかろうか。東京超初心者がアドリブでチョイスするにはなかなかの場所じゃないだろうか。

生まれて初めて見る生レインボーブリッジに感動しながら、僕達2人は水上バスでお台場へと向かった。

お台場では、フジテレビの球体展望台に行ったり、観覧車に乗ったりもした。お台場に着いた頃には夕方近くだったから、観覧車からの光景はとても綺麗だった。

そして2人でまた水上バスに乗り、お台場を後にした。

来る時にはまだ外は明るかったけど、帰る頃にはすっかりあたりは暗くなり、水上バスから見上げるライトアップされたレインボーブリッジに感動した。

この時間になると、あまりお互い話さなくなった。緊張しているとかそういう事では無かった。むしろ、最初に比べるとすいぶん距離も近くなったし仲良くもなった。

まだ少し寒い季節。僕が来ていたパーカーのフードの中に手を入れる彼女。考える事はただ1つ。

もう帰らないといけない時間だ。という事だった。

彼女は当時実家で暮らしていたために、あまり外泊が簡単に出来る状況でもなかった。言って無理という事はないだろうけど、ただなにより2人は今日が初対面なのだ。

僕はもうすでに当日家に帰れる時間ではなかったので、どっか適当にビジホにでも1人で泊まって朝まで時間を潰せばいいだろうくらいに考えていたのでどうでも良かったが、やはり彼女はそういうわけにはいかない。

今ここで離れたら、もう今度はいつ会えるか。そもそも本当に次会えるのかもわからなかった。

どちらから何か言うでもなく、ただなんとなく、いつか来るその別れの時を避けるかのように、静かな時間は流れていく。綺麗な水上バスからの景色と共に。

そして僕達は、夜ご飯を食べる事になった。もう店は覚えてないけど、確かそこらのチェーン店の居酒屋だったように思う。

2人どこかぎこちなく、でも楽しく今日の感想を語ったりする。あれ面白かったね。あれ綺麗だったね。

でも、どちらでもなくこの後どうするかの話はしなかった。

さてどうしたもんかな。と悩んでいると、彼女が席を立ちどこかへ行った。トイレでも行ったのかな?と思って1人待っていると、しばらくして彼女が戻ってきてこう言った。

「……親に今日は泊ってくるって言ってきた」

と。本当にそれが簡単な事だったのかどうかは僕にはわからなかったが、とにかく。彼女は今日僕と一夜を共にするという決意がある。という事だった。

「……そっか。じゃあ、これからどこ行こうか!」

予想外のデート延長戦の開始である。

でもこの時、1つ大きな問題があった。

僕はこの時、いわゆる女性経験が無かった。わざわざ大阪から千葉までただ1人の女の子に会いに来るようなフットワークはあるくせに、女性とそういう関係になった事がなかった。

年齢=彼女いない歴である。

それがまさか。まさかだ。そんな覚悟は何もしてこなかったし、なにより、果たして僕達は付き合ってると言えるのだろうか?

『とりあえず会おうか?』

そんなお試し期間なんじゃなかったのか?

そんな動揺を悟らせないように、僕はなるべく普通にふるまった。

2人で食事をしたあとは、僕の希望で歌舞伎町へと向かった。今思えばなんでと思うんだけど、夜の街を見てみたかったのだ。

でも、もう1日歩いて観光していたので2人とも疲労が強く、当然じゃあそろそろ泊まるところをどうしようか?という段階だ。

そして場所は夜の街歌舞伎町。なんとはなしに、人生初のラブホテルに泊まる事になった。

結論から言えば、その日は特に何をする事もなかった。

たくさん歩いて疲れたとか、その日初めて会ったからとか、いくらでも言い訳は出来るけど結局は僕に一歩踏み出す勇気が無かったからだ。

そして迎えたデート2日目。予想外の延長戦。

1日目の事は今でも結構詳細に覚えているのに、なぜかこの2日目の事はほとんど記憶にない。

たぶん、前日の夜緊張であまりよく眠れなかった事、勇気の出せない自分に対する脳内反省会で頭がいっぱいだったんじゃないかと思う。

事前にいくらか交流があったとはいえ、実質初めて会った女性と夜を共にし、特に何をするでもなく寝る。

これが果たして紳士的なのか根性無しなのか。据え膳食わぬはなんとやら。この辺のさじ加減は、僕と同じ男子諸君には永遠のテーマなんじゃないかなと思う。

とにかく。童貞の悲しい腰抜けっぷりは置いといて。そうつまらなくもない、たぶん楽しかったよく覚えていない2日目も終わろうとしていた。

この2日目の終盤。これだけは今でもはっきり思い出す事が出来る。

彼女がそろそろ帰る時間となり、さすがに2泊はマズイので送っていく事にした。彼女の家は千葉のさらに南。南房総は君津市だった。

東京から西に向かって帰る僕にとっては遠回りどころの話ではないけど、東京大阪間に比べれば誤差かなと思えた。

なにより、彼女と離れたくなかった。

2人、静かな電車の車内で何を言わずただ無言で時間だけが流れていく。

離れたくない。もっと彼女と一緒にいたい。もう僕の中で彼女は『かずき』ではなく、立派な1人の女性として見えていた。

ただ、それを言ってしまっていいのかわからない。僕には、女性の気持ちがわからなかった。何か言ってしまえば彼女を困らせてしまうかもしれない。恥をかかせたかもしれない。

そうしてついに電車は、終点君津に辿り着く。

ここまで来たついでだ。彼女の家の近くまで行く事にした。あたりはもうすでに夜で、僕はすでに2泊確定の状況である。今さら失う物など何も無い。

失う物があるとすれば、それは彼女との時間だけだった。

電車を降り、階段を上り改札を出て、駅の出口から外へ出る。

そこで、僕は人生で初の勇気を出してみた。

この2日間で1度も握った事の無かった彼女の手を、繋いでみた。いわゆる恋人繋ぎというやつで。

今思えば、何をアホな事をと思うし、他の人が見ても笑うかもしれないが、少なくとも当時の僕にとってはこれは凄く勇気のいる事だった。

そして、彼女も僕の手を握ってくれた。ぎゅっと。

それだけで、僕の心臓は張り裂けそうになった。今までで一番近くに彼女がいる。手から伝わる確かなぬくもりがそこにはある。

たぶん、手汗とか凄かったと思うし挙動も怪しかったと思うけど、嬉しさもあったけど後悔もあった。

もっと前からこうしていれば、また違った世界があったのかもしれない。と。

もうすぐ目の前に迫る別れの時間を前に、2人手を繋いで夜の暗い道を歩く。少しでも遅く。長く一緒にいられるようにと。

僕のこの情けない緊張が、鼓動と興奮が、どうか彼女に伝わりませんように。と。

そして僕は彼女の帰りを見送った。どちらからでもない。ただ、一言がそこにあった。

「……じゃあ、またね」

その『またね』はいつになるんだろうか?本当に、また会える日が来るんだろうか?

僕は、言わなければいけない大切な言葉を、どうしても言えないままに大阪に帰った。

それから。僕達はそれぞれの家に帰り、また今までと同じ日々にもど……ったりはしなかった。

なぜなら、もう『かずき』はどこにもいないからだ。そこにいるのはもうすでに『僕が好きな女性』であったから。

そして、この関係はそれからどうなったか?というと、これまた特に面白い話でもなく、後日僕の方から電話で自分の気持ちを伝えた。

「好きです。付き合ってください」

みたいなベタな事を言ったような気がする。もうよく覚えていない。でも、これでも本当に勇気がいる事だったし、緊張で汗も凄かったと思う。

ただ彼女に

「そういう事はあの日に直接言ってほしかった」

って笑いながら言われたのだけは覚えているんだけど。そらそうだよね。嫌いな奴と1泊したりしないよね。

僕から何もしなかった事に関しては、少し残念な気持ちもあったけど、大事にされてるんだなと思った。って言ってた。そこにどれだけ本音が含まれているかは僕にはわからないけど。

こうして、僕と彼女の遠距離恋愛が始まった。

今より少し前の話。まだ、インターネットだの定額通話だのが全然発展していない時代の話。

遠距離恋愛の過酷さも今とは比べ物にならない。

なにをしてもお金がかかる。会いたい恋しい好きだから。毎日何時間も電話しているわけにもいかない。電話代が大変高額になってしまうからだ。

距離もなかなかに遠い。会うたび新幹線。簡単に出来る事ではない。

僕の人生は曇っていた。でも、少しだけ、光が差した。彼女と会うその日のために働く。これが人生の目標にも思えた。

当時僕はあまり裕福では無かったから、会えるのも早くて月1。長ければ2か月に1回という事もあった。

毎日他愛ない1日の報告の電話をする日々。もっとたくさん声が聞きたい話したい。でもそれをしてしまうと、電話のしすぎで会うお金が無くなっては本末転倒だから。なるべく我慢した。

彼女の働く先の友達や上司の話を楽しそうにしているのを聞くと、それが男だったら嫉妬もした。とにかく僕にとっての世界は彼女でもあった。

そしてようやく、会える日がやってくる。月1か。2か月に1度か。会える日は泊り。さすがに日帰りは厳しい。

なぜか彼女の両親が2人の付き合いに理解を示してくれたので、向こうに行った日は彼女に家に泊まれたのは幸いだった。

まずは地元の駅から京都駅までJRで向かい、そこから新幹線に乗り換えて東京駅を目指す。

その時僕は必ずCD(アルバム)を2枚持っていてそれを聞いていた。曲はなんでも良かった。ただCDが2枚あればそれでよかった。

京都駅から東京までは新幹線で約1時間30分ほど。アルバム2枚も聞けば丁度東京に着くからだ。今ほど携帯もいい物ではなかったので、ヒマ潰しの幅も狭かった時代の話。

CDを聞くのに集中でもしていなければ、その時間を耐える事が難しかった。やっと、焦がれた彼女に会えるのだから。

そして長い時間を耐えてついに新幹線は東京に着く。でもここからが想像以上にまだ長い。

東京駅の雑多な人込みを進み、僕は総武線の乗り場へと歩く。最初の頃にはあんなにたくさんいた人が、そこそこまばらになっていく。

会えるのはだいたい週末だった。金曜日の仕事を定時で終え大阪から東京に向かう頃には、もうすでに結構いい時間になっている。

総武線に乗り千葉駅まで。千葉駅で、総武線から内房線へと乗り換える。この頃にはもう周りにあまり人はいない。

金曜日の夜。こんなにも期待と興奮に満ちた気持ちで電車に乗っているのはおそらく僕くらいだろうと思われた。

内房線を君津に向かい、僕を乗せた電車は進む。車内に人が少なくてよかった。周りに人が少ないから、彼女に近づくたびにニヤニヤする僕の顔をあまり人に見られずにすむから。

1駅。また1駅と電車は進み、そのたびに僕は彼女へとメールを送る。今〇〇駅。今は〇〇駅。

姉ヶ崎、長浦、袖ケ浦……。

そして、ついに電車は僕の最終目的地である君津に辿り着いた。

本当は今すぐにでも走り出したい気持ちを抑え僕は電車を降りる。

駅のホームから階段を上がり改札へと向かう。改札に辿り着いた僕の目の前には、ついに念願の彼女が……。

いない。

いつも彼女はここにはいない。僕達のいつもの待ち合わせ場所はここではなかった。

お泊り用の荷物が入った対して重くもないボストンバッグを、恰好をつけて肩にかけて持つ。少しでも余裕があるように見せるために。

改札を出て、出口へと向かい階段を降りる。1段。また1段。僕は地上へと近づいていく。

階段を全て降りきり、前を見るとそこにはいつも彼女がいた。

心臓の音がうるさい。そこにいるのは、2か月ぶりに会う愛しい彼女だ。僕はこの日のために生きていると言っても過言ではない。

喜びと感動に手が震えそうになる。でも、僕も男だから。そんな気持ちが悟られないように、平静を装って彼女に話しかける。

「……よう!久しぶり。元気してたか?」

すると彼女はこう答える。

「……うん。元気してたよ」

ここに来ると、もう僕の気持ちも限界になる。

恰好つけて肩にかけて持ったカバンを下におろし、僕は彼女を抱きしめる。

もう離れないようにと強く。しかし壊れてしまわないように優しく。

今自分の腕の中に確実に、確かにある彼女の温度を体に感じながら、どうして2人の体は2つなのかと考えてしまう。

ずっと一緒にいられたら。1つの体になれたなら。もう2度と、離れないように。

そして僕は彼女にキスをする。お互いの間にあったとても長い長い距離を。時間を。全ての空白を埋めるようにと。

僕の彼女はいつも改札の前では待たない。いつも2人が会う場所は、駅の出口の階段を下りて少し進んだ影のある倉庫の前付近。

どうしてそこで待ち合わせなのかは、こういう理由があるからだ。

大阪を出る時にはまだ夕方前であった時間も、すでに終電近い時間。さして都会でもない人が少ない君津駅前には僕達以外にほとんど人はいない。

僕達は、倉庫の影で抱きしめあう。外であろうと関係無かった。ただお互いの世界だけがそこにあって。いつまでもその時間は続いているかのようだった。

実際は、そんなに長い時間ではないとは思う。でもそれを待ち望んだ2人には永遠に思える、愛しく大切な時間。

いつか僕はキスをやめ、彼女の頭をソッと撫でて顔を抱き寄せる。彼女もそれに応じて僕の体に頭を預けてくる。

彼女を抱きしめながら僕はつぶやく。

「……会いたかった」

最初の頃には恥ずかしくて言えなかったような甘い強い言葉でも、今なら言える。何を言っても恥ずかしくない。それだけの強い想いがここにはあった。

でも、今の僕の中を表現する上手い言葉が見つからない。会いたかった。好きだ。愛してる。どれを取っても表現としては弱いように思えた。

腕の中の彼女はそっと僕の顔を見上げ、耳に口を近づけて僕にそっとささやいてくる。

「……大好き」

そして僕は、また恋に落ちていく。

 

で、こっから好き好き耐久耳舐めが始まる。っていう俺の脳内設定よ(オチ)

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雑記

Posted by koyuki